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2012.02.21

復活! 小島秀夫/菊地由美/矢野健二の「トラウマ・シネマ ネクスト・ジェネレーション」第1回

「トラウマ・シネマ ネクスト・ジェネレーション」第1回

 




小島秀夫/菊地由美/矢野健二(司会進行)


突如WebNewtypeで連載が始まることになった「トラウマ・シネマ ネクスト・ジェネレーション」。前身である「トラウマ・シネマ」が、以前Newtypeの兄弟誌で連載があったらしい、と噂には聞きつけてはいたが、いったいなぜ2012年になって復活したのだろうか。ゲームクリエイター・小島秀夫と女優・タレントの菊地由美を交えて(巻き込んで)開催された秘密会議から、トラウマの扉が開かれる……?



――というわけで、なぜだか唐突に復活しました「トラウマ・シネマ」です。とは言っても「それって何?」という人がほとんどでしょうから、「トラウマ・シネマ」の歴史から紹介しましょう。

菊地:私はまったく事情がわからないまま、ここにいます(笑)。


――そもそもは2000年の2月9日に僕と小島さんが初めて出会ったことがきっかけです。

小島:もんじゃ焼き屋で会ったんですよ。僕と矢野さんの共通の友人の高島(健一)さんという人がいて、高島さんが開いた飲み会で会った。


――そうなんです。僕がその会に少し遅れて行ったら、関西弁のおっちゃんが映画の話をしていた。たしか、当時公開されたばかりの「シュリ」の話をしていて、それがべらぼうにおもしろかったんです。映画そのものよりも、たぶんこの人の話のほうがおもしろいんだろうなあ、というくらい。で、名刺交換したら「コナミ・コンピュータエンタテインメント・ジャパン(KCEJ) 副社長 小島秀夫」って書いてあった。僕はゲーム業界に疎かったので、「コナミって大きい会社なのに、こんなおもしろい人が副社長なんて、いい会社だなあ」と思ったんですね。

小島:「KCEJ」ってコナミの子会社なんで、そんなに大きくはないんですけどね。


――そういうことも当時は知らなかったんです。「メタルギア ソリッド」というゲームを作ってる人だ、くらいの認識はさすがにありましたけど。その頃、僕は新雑誌の準備をしていて、小島さんに映画についての連載をお願いしたんです。

小島:でも当時は「ゲーム批評」で映画評の連載をしていたんで、無理だって言ったんです。


――じゃあ、原稿が無理ならトークでいいじゃないかと、もう一度お願いした。高島さんも映画業界出身で超マニアなので、この2人の対談で連載しませんか、と。要はもんじゃ焼き屋での映画にまつわるヨタ話を誌面で再現したいということですね。そんなわけで、2000年7月に創刊された「Newtype」の兄弟誌「Newtype.com」という雑誌で連載が始まるわけです。

菊地:12年も前にやってたんですね。「トラウマ・シネマ」っていうタイトルは?


――雑誌が隔月だったので、最新映画の話をしてもタイムラグが出ちゃうので、昔の映画の話をしましょう、その頃はちょうどDVDも普及し始めた頃だったので、昔の作品でも鑑賞できるだろうということで始めました。1回目の対談のときはまだ連載のタイトルも決まってなくて。

小島:1回目はなぜか「サンダ対ガイラ」の話をした(笑)。


――そうそう。で「サンダ対ガイラ」が2人にとってトラウマになるような映画だったという展開になって、じゃあ「トラウマ・シネマ」でいいじゃんということで。

小島:途中からは新作も扱うようになりましたよね。2人とも業界的な配慮とかまったく関係なく、言いたい放題だった。


――そうですよ。「ロード・オブ・ザ・リング」(ピーター・ジャクソン監督)の回とか。まだ公開される前で予告編しか観てないのに、「本当は別のピーターさんに監督をお願いしようと思ってたのに、間違えてピーター・ジャクソンを指名してしまったんじゃないか」とか(笑)。

小島:だって「バッド・テイスト」とか「ブレインデッド」のピーター・ジャクソンですよ。大好きな監督ですけど、ハリウッドで失敗して、ニュージーランドに帰った後に、まさかあんな超大作を撮るとは思ってもみなかった。


――たしかに当時の記事でも「個人的には期待できると思います。もちろん観に行きますよ」と言っている。でもそのあとで、「ジャクソンの作品をマリオンで観られる最後の機会(笑)」とか言ってる。

小島:たしかにこれはひどい(笑)。「乙女の祈り」とかみんな単館でしたから。でも、そういうことも平気で載せてしまう男らしい連載だった(笑)。


――そのせいかどうか、雑誌が2年とちょっとで休刊してしまい、その後はwebで不定期の連載になりました。2006年くらいまではやってましたね。最後のほうでもピーター・ジャクソンの話がでていて、「キング・コング」のメイキング映像がすばらしいと言ってます。ピーター・ジャクソン自らがナビゲーターになって映画の舞台裏を紹介していて、それ自体がエンタテインメントになっていると賞賛している。で、その頃に始めた「ヒデラジ」も「キング・コング」のメイキングのようなコンセプトでやりたい、という発言もしてますね。

小島:ああ、そんなこと言ってましたね。でも、ヒデラジでは言えないことも、ここでなら言える(笑)。




――長い前振りでしたが、では始めましょう。では「J・エドガー」です。これは3人とも観てますね。レオナルド・ディカプリオ主演、クリント・イーストウッド監督作品。1924年から1972年までFBI長官を務め、8代の大統領に仕えたジョン・エドガー・フーバーの生涯を描いた作品です。

小島:僕、ムラシュウ(村田周陽)と行ったんですよ。で、こいついつ手握ってくるか、と思って気が気じゃなかった(笑)。もう怖い怖い(笑)。


――観てない人にはなんだかわからない話ですが(笑)。

小島:観に行く前に、朝日新聞の映画評を読んでしまったんです。だからエドガーがホモセクシュアルだということにフォーカスした話だってことはわかってたんです。

菊地:ぜんぜん知らない状態で観ました。噂で聞いたこともなかった。

小島:実際、彼が本当にホモセクシュアルだったかどうかは、わからないんでしょ。イーストウッドも知らなかったらしいですよ。しかし、血まみれのチュウですよ。


――映画としてはどうですか?

小島:イーストウッドって、見たくないものをみせるでしょ、グロテスクなものとか。昔からやってるでしょ。あと変な俯瞰カットとか。それがいいんだかどうかはわかりません。天才監督だということはわかるんですけど。

菊地:ナオミ・ワッツ(ヘレン・ガンディ:エドガー・フーバーの秘書)がよかったですね。あの人もレズビアンなんですかね?


――そうみたいですよ。

小島:でも、あんなFBIみたいな会社、いいですよね。


――ええっ、嫌ですよ。だって経営のトップに異性愛者が誰もいないんですよ! それでみんな仕事に生きてるなんて。

菊地:そうですよ。でもイーストウッドの映画って、いつも観終わってしばらくしてからじわじわきません?これも観たあとはさっぱりわからなくって、家に帰って夕方くらいになって、じわーって来るっていうか。

小島:イーストウッドもわかって撮ってないですよ。僕、最初のほうのハンカチのシーンがよかったですね。

菊地:ハンカチって?

小島:あの面接してて、副長官になるクライド・トルソンと2人きりになって窓際に行って「俺は汗をかいたんだ」って言って、ハンカチ借りるでしょ。あれ、匂いかいでるんでしょ。あれ観て、この人はそういう人なんだってビッビときましたよ(笑)。「仕立て屋の恋」のハンカチのおっさんを思い出しましたよ。でも、これトレーラー観て行った人にとっては、「?」の連続でしょうね。

菊地:ねえ、まさかああいう話だとは思わなかったですよ。

小島:うちの(小島スタジオ)の○○さんとか××くんとか、そっちの人なんで、けっこう泣いたらしいですけどね。


――ええっ! ○○さんてそうなの?

菊地:嘘ですよ!




――なんだよ! では次行きましょう。「トワイライト・サーガ ブレイキング・ドーンPART1」。「トワイライト・サーガ/初恋」「ニュームーン」「エクリプス」と来て、今回はシリーズ完結編の第1部です。公開は2月25日です。

小島:これはもう前作「エクリプス」を観てたら絶対行くでしょう。あれおもろいし。


――「エクリプス」ってどんな話でしたっけ?

小島:あの2人を誰かが殺しにくるんですよ。ほら、なんやったけベムじゃないし。

菊地:ええとね。

小島:ベム? ベラ? ベロ?

菊地:ちょっと、黙っててくださいよ! もう私の「トワイライト」がどんどん汚されてく気がする! ええとね、イタリアにいるヴォルトーリ一族ですよ。これとニューボーンというヴァンパイア集団からベラ(ヒロイン)を守るために、エドワードと狼族のジェイコブが手を組んで戦う、という。

小島:僕、昔これの宣伝部長みたいなことやってたんですよね。今度はトワイライターの由美ちゃんがやってくださいよ。

菊地:やりますやります! 「トワイライト」のことなら何でも聞いて!


――「ブレイキング・ドーン」のストーリーは原作どおりなんですか?

菊地:うん、ほとんど小説どおり。でも、ベラとエドワードの結婚式のシーンは原作ではわりとあっさり書かれてる。

小島:あの結婚式、長いですよね。ゲストの挨拶とかも入れてるし。途中でカットバックしたとき、周りの客がいなくなるでしょ、あれ、絶対撮り忘れたんですよね(笑)。

菊地:違うの、あれは2人きりの世界ってことなの。全部意味があるんですよ!

小島:これ2部構成で、今回は第1部でしょ。今回は2人が結婚して初夜を迎えて妊娠して……、ていうあたりまでですよね。あの新婚旅行で南の島に行って、でもなかなかしないでしょ。あの悶々としたかんじがティーンエイジャー向けでいいですね。

菊地:原作がそもそもティーン向けの小説ですからね。

小島:でも、結局、エドワードはベラとしたいだけなんでしょ?

菊地:違う違う違う! 違うの! したいのはベラのほうなの!

小島:両方ともしたことないんでしょ?

菊地:そう2人とも処女と童貞なの。

小島:わけわからん。エドワードって何百年も生きてるんでしょ?

菊地:1901年生まれの111歳です。

小島:もう腐ってますよね(笑)。「ぼくのエリ」のあいつみたいに、腐って、もうないですよね(笑)。

菊地:腐ってない! だってエドワードは人間じゃないんですから。17歳のときに病気にかかっちゃうんです、それで吸血鬼のお父さんに吸血鬼にしてもらって永遠の命を得るんです。で、エドワードは100年前の倫理観をもっているので、初夜の日に愛する人と結ばれるという伝統を重んじる人なんです。一方、ベラのほうはいますぐでもしたいんです。でもエドワードは「まだダメだ」って拒む。


――ああそうか! そのあたりが受けてる理由なのか。女の子のほうからのアプローチね。これはヴァンパイア映画としては新しい! 古典的なヴァンパイアって、不死の領域に人間を誘う誘惑者でしょ、首筋に牙を刺して血を吸うという行為はセックスの比喩とも言われるし。これは人間とヴァンパイアの関係が逆転してるんだ。

菊地:そうそうそう。だからトワイライターの人たちは、ヴァンパイアってセクシャルというかセックスのイメージと結びつくものだったのに、エドワードはその正反対の、自分を大切にしてくれる本物の中の本物の王子様なので、世界中の女子の憧れなんです。

小島:なるほどね。由美ちゃんはジェイコブ(狼族で、ベラの幼なじみ。ベラに思いを寄せている)はどうですか?

菊地:「エクリプス」のジェイコブが最高ですね。

小島:パンツ一丁で昼間っからビール飲んでる狼族と、おしゃれな服着て野球やってるヴァンパイアとどっちがいいんですかね(笑)。このシリーズには他の一族は出てこないんですか? フランケンとか、ムジナとか。


――それじゃ、「怪物くん」になっちゃいますよ(笑)。

小島:後半の映像が凄いですよね。どうも一部をカイルさん(カイル・クーパー。「セブン」「スパイダーマン」などのオープニングムービーなどを手がけている。「メタルギア ソリッド2」および「3」のオープニングもカイル・クーパー率いる映像集団が担当)がやってるみたいなんです。

菊地:あとね、このシリーズがティーンエイジャーに受けているいちばんの理由は、私はこういうことだと思うんです。ジェイコブってベラをエドワードにとられちゃうじゃないですか。けど、この映画のラストでジェイコブはあることをするんです。2人の××に○○をする。これはファンにとっては、ジェイコブに対する救いなんです。

小島:ええええ、でもそれは男にとってはうれしくないですよ。

菊地:男の人にとってはそうかもしれないけど、女の子にとっては、最高なんです!


――なるほどね、これは女の子にとっての最高の三角関係なんだ。

菊地:そう、だって私ベラになりたいもん。世界で一番有名な三角関係なんです! これになりたいんです、私。



――最高のキャッチコピーをいただいたところで、では、次です。映画じゃないですけど、アメリカのTVシリーズ「ウォーキング・デッド」です。企画はあのフランク・ダラボン。「ウォーカー」と呼ばれるゾンビが大量発生したことで文明が崩壊した世界が舞台です。ダラボンなので、どこか「ミスト」を思わせるようなトーンもあります。極限状態で浮き彫りにされる人間性とか。

小島:オープニングがいいですね。ゾンビの出し方とかうまいですね。「28日後」とか思い出しました。奥さんがゾンビになっちゃった人が、それを銃で撃とうとするじゃないですか。スコープで覗いて引鉄を引こうとするんだけど、ためらってできない。このあたりは、わかってるな、というかんじです。今の流行だとすぐ撃っちゃうけど、そうはしない。

菊地:それはやっぱりダラボンだからですかね。

小島:ダラボンは「ミスト」と「ブレードランナー」のメイキングが最高ですよ! それはさておき、2話なんてむちゃくちゃおもろいですよ。ゾンビ解体してねえ。

菊地:そうそう、でも臓物、首に巻かなくてもいいのにと思ったけど(笑)。

小島:3、4話でキャンプ場に逃げるでしょ。でも、ゾンビがうようよいる市街に銃が詰まった鞄を置いてきちゃったんで、取りにもどるでしょ。あれが、ゾンビものの定番なんですよ。「ドーン・オブ・ザ・デッド」でも取りにもどってゾンビに襲われるとかありましたね。

菊地:公園で上半身だけのゾンビに会うでしょ、それをわざわざ引き返して撃つ、とかいいですよね。ああいう細かい演出がいいですよね。

小島:ダリルていうキャラがいい。ゾンビを撃つのに銃を使うわけですけど、それだといつかは弾切れになってしまうでしょ、でも彼はボウガンを使うんですよね。ゾンビに刺さった矢を抜いてまた使ってる。こういうのはうまいですね。


――音に反応してゾンビが集まってくるから、やたらに発砲できないんですね。

小島:あと、韓国人の男の子のキャラクターもよかった。

菊地:なんでお前はそんなに街の地理に詳しいんだ、って聞かれて、ピザの配達やってたからだ、って答えるのね。

小島:車のアラートを鳴らしっぱなしで走ったりね。賢いんだかどうだかよくわからない(笑)

菊地:そのままキャンプ場に行くでしょ。ゾンビに場所がわかっちゃうじゃない。でも、音が反響するから大丈夫、とか言って、あの理屈はよくわからなかった(笑)。

小島:シーズン1は全部で6話なんですけど、最終話はちょっとトーンがかわってましたね。


――でも、あそこでの登場人物の選択は、「ミスト」のラストを思い出させましたけど。

小島:もちろん、大傑作とかそういう大仰なレベルの作品ではないですけど、これってアメリカではケーブルTVでやってたんでしょ? このクラスの作品がTVで観られるって、すごいことですよ。去年行ったコミコンでも、けっこうこれのプロモーションやってましたしね。こういうのが観られるんならアメリカに住みたいなあと思うんですよ。結論を言えば、ゾンビが嫌いな人とは、話をしたらあかんのですよ(笑)。

菊地:ほんとにねえ(笑)




――では、われわれ3人の間では、早くも今年最高の1本だと盛り上がっている「ドライヴ」です。監督はデンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン。主演は「ブルーバレンタイン」のライアン・ゴズリング、ヒロインには「17歳の肖像」「わたしを離さないで」のキャリー・マリガン。昼間はハリウッドのスタントマンで、夜は強盗の逃走に手を貸すドライバーの物語です。日本公開は3月31日です。

小島:僕は、こいつが着ていたスカジャンを注文してありますからね。これはノワールの傑作ですね。主人公についての説明がほとんどないでしょ。なぜこいつが強いのかとか一切言わない。このストイックさというか男らしさが昔の映画のかんじですよね。ただ、観る人を選ぶタイプの映画ですね。30代後半以降の男なら間違いなくハマると思います。昔はこんな映画ばっかりでしたから。今風のやり方で撮ると、こうはならないですね。今だとキャラクターに過剰に説明を入れるでしょ。元警官で奥さんと離婚していてとかそういうキャラクターの背景を説明しますよね。観客もそれがないと感情移入ができないとか、わからないとか言うでしょ。そういうところに背を向けてるのがいいですね。それから、この監督のひとつ前の映画が凄いです! 


――「ヴァルハラ・ライジング」! これって、日本では公開されなかったんでしたっけ?

小島:でも4月に公開が決まったみたいです。冒頭の5分観ただけでも凄い。

菊地:どんな話なんですか?

小島:なんかね、主人公が拳闘させられてるんですよ。台詞もほとんどない。なんじゃこれ、みたいな。

菊地:私「ドライヴ」観て、1週間この世界から抜けられなかったですから。

小島:冒頭の緊張感なんて、今までにないかんじでしょ。演出がね、絶対こんなんようせんわってかんじで。この監督、出世株ですよ。


――途中、主人公とヒロインがエレベーターでキスするでしょ。あれが最高にいいですね。

菊地:小島さん、「なんであそこでキスするの?」って私に聞いてくるんですよ。はあ? なんでわかんないのって(笑)。

小島:いやわかりますよ。でも、あんなギャグみたいなのはないですよ。「タケちゃんマン」ですよ、あれは(笑)。

菊地:なんでですか(笑)エレベーター・チュウは基本ですよ!

小島:ライアン・ゴズリングって「ラブ・アゲイン」ていうコメディ映画に出てたでしょ。ジュリアン・ムーアとかも出てたやつ。あれ、むっちゃおもろいんで、観てください。こいつ(ライアン・ゴズリング)がプレイボーイの役なんです。「40歳の童貞男」のスティーヴ・カレルが奥さん(ジュリアン・ムーア)に逃げられて、バーで飲んだくれてるところで、ライアン・ゴズリングに出会うんです。それで、スティーヴ・カレルに恋のテクニックを教えるという話なんですけどね。


――僕はまだ観てないんですけど、「ドラゴン・タトゥーの女」はどうですか? 原作は世界的なベストセラーで、本国スウェーデンではすでに映画化されてます。それをデヴィット・フィンチャーがさらに映画化しました。ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)とドラゴンのタトゥーをした天才的ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)が40年前に起こった大企業グループの創業家一族のハリエット失踪事件を追うという話ですが。

小島:センス抜群ですけどね。ただ、原作読んでて、スウェーデン版を観ているとカタルシスは薄まりますね。エンディングが違うとか、設定やエピソードにアレンジを加えているとかはないですね。もちろん、スウェーデン版よりもお金はかかってるし、丁寧につくってますけどね。リスベットはこっちのほうが断然いいです。

菊地:チ○チ○出てこなかったですね。

小島:ねえ、CGでつくったらしいけど、チ○チ○。

菊地:チ○チ○観たかったなあ。

――あのお、映画観てないので、話がまったく見えないんですけど。

小島:たぶんね、ミカエルとリスベットのベッド・シーン用につくったんですよ。

菊地:それか拷問シーン。

小島:しかし、なんでダニエル・クレイグはあんなに素晴らしいんでしょうね、拷問シーンやらせると(笑)。オープニングがかっこよかったですよね、ブラー・スタジオ(ハリウッドにあるCGアニメスタジオ)がつくったやつ。

菊地:ドラゴンのやつでしょ、あれ、よかったですね。


――「戦火の馬」はどうですか。スピルバーグの新作ですね。これは小島さんしか観ていない。公開は3月2日です。

小島:「戦火の馬」、僕はもう大好きです。今年はこれと「ドライヴ」ですよ。これは新しいですよ。時代は第1次世界大戦です。「マイウエイ」(カン・ジェギュ監督)も戦争という波に翻弄されて3つの国の軍隊をわたり歩いている人たちを通して戦争を描いてるじゃないですか。戦争がいかにアホな行為かということとか。でも、ちょっと物語を語る手つきがわざとらしいというか、お涙頂戴になってるでしょ。でもこの映画の主役は馬なんで、そうはならない。対立している両方の軍隊に馬好きがいるんですよ。戦争の利害を超えて、彼らは馬を守ろうとするんです。途中で凄くいいシーンがあるんです。前線で敵対する軍が向き合ってるんです。塹壕に両軍がこもっていて一触即発の状況なんです。そこに馬が紛れ込んできて、鉄条網にからまって鳴くんです。そうすると両方が休戦の白旗を立てて馬を救いにくる。命令とかじゃなくて、それぞれの軍が自主的に助けに来るんです。それまではめちゃくちゃな戦闘をしてて、殺しあってる。戦闘シーンの演出はさすがスピルバーグなんで、本当に怖いんですけど、馬を救った後、敵どうしが握手するんです。これはすごくいいシーンです。馬は人に助けられて生き延びていくんですけど、その傍らで人はむちゃくちゃ死んでいく。これはすばらしい映画です。馬の演技も凄いです。


――CGじゃないらしいですね。

小島:いやCGじゃないですか(笑)。兵器フェチのスピルバーグだから、変な戦車とかも出てくるんです。お話にはまったく関係ないですけどね(笑)。


――「ヤング≒アダルト」は観てますか? 「マイレージ・マイライフ」のジェイソン・ライトマン監督、「JUNO/ジュノ」のディアブロ・コディ脚本、シャーリーズ・セロン主演で、2月25日公開です。

小島:観てないですねえ。

菊地:観ましたよ! 私、シャーリーズ・セロンがいちばん好きな女優さんなんです。同い年なんですよ、私と。信じられないでしょ? このシャーリーズ・セロン、すごく顔がくたびれてるんですよ。カメラが寄ると、シワはすごいし、目の下にクマはあるし。

――でも役柄に合わせてるんでしょ。

菊地:「モンスター」のあたりで何か吹っ切れたんですかね。

小島:これは何系のお話なんですか

菊地:30代40代女子系? かなりイタい話です。この人はヤングアダルト小説(女の子向けの小説)のゴーストライターなんです。元は超田舎に住んでて、都会(ミネアポリス)に憧れて出てきてる。バツイチの一人暮らしで大酒飲みで、犬飼ってて、ゴーストでやってる小説のシリーズも打ち切りが決まってて、どうにも冴えないんです。でも、故郷では超有名人で、故郷を捨てて出てきたもんだから、そこには帰りたくない。だけどある日、突然、昔の彼氏からメールが来るんです。メールを見ると赤ん坊の写真が付いてるんです。なんでこんなの送ってくるの? って思うんですけど、荷物をまとめて故郷に帰るんです。昔の彼氏を取り戻そう! って。そのダメダメっぷりがたまらないんです。


――これ、冒頭がすごいでしょ。シャーリーズ・セロンが泥酔した状態から朝目を覚ますんですけど、いきなりコーラをペットボトルからラッパ飲みして、Tシャツの下に手を突っ込んだかと思うと、ヌーブラをベリベリってはがすの(笑)。

菊地:そうそう(笑)。私はね、故郷に帰りたくないんです。東京から戻って実家で暮らすなんて考えられないんです。故郷に帰って「帰ってきた女」みたいにみんなに指さされて暮らすなんて耐えられない。この映画はね、そういう話なんですよ。


――都会に出てきた彼女は、故郷にとどまっている人たちより成功していて、いい生活をしてるはずなんです。大嫌いな故郷で暮らしていたティーンエイジャーの頃から彼女はイケてた存在で、そこからさらに都会でステップアップしてるはずなんです。でも、そんな田舎で暮らしてる人たちが、自分より幸せそうなのが我慢できない。だって、昔の恋人の妻になって、赤ちゃんまで授かっている人がいるんですから。だから、この町でいちばんイケてる自分は今でも恋人を取り戻せると思っていて、大騒動を起こす。

小島:由美ちゃん、これ日本版のリメイク権買い取ったらどうですか? それで主演やる。どうですか?

菊地:ええええ(笑)。

小島:絶対イケますよ。今はむしろそういうタイプの映画があたってるじゃないですか。


――「サイタマノラッパー」とか「サウダーヂ」とか? お話は違いますけどね。

小島:そしたら僕、このデブ(パットン・オズワルト)の役やりたいなあ(笑)。


――そんなわけで、まだ語り尽くせていない映画も多々ありますが、今回はこのへんで。次回をお楽しみに!





写真左より、小島秀夫、矢野健二、菊地由美

2012年2月8日、角川書店にて収録