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押井守の長編実写映画「アサルトガールズ」完成披露記者会見と対談レポート!

2009-11-25 19:21

 10月19日、映画「アサルトガールズ」の完成披露記者会見が行なわれた。
 この映画は、「イノセンス」や「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」などのアニメ映画の監督を行なってきた押井守による長編実写映画。押井は、2007年公開の「真・女立喰師列伝」や、2008年公開の「斬~KILL~」というオムニバス映画内で短編実写を監督しているが、長編実写としては2001年公開の「アヴァロン」以来、8年ぶりの監督作品である。
「アサルトガールズ」は「アヴァロン」の世界観を一部引き継ぎ、“アヴァロン(f) ”という仮想空間内でモンスターと戦う、ゲームプレイヤーたちの物語となっている。記者会見には押井のほか、劇中でゲームプレイヤーとして出演する黒木メイサ(グレイ役)、菊地凛子(ルシファ役)、佐伯日菜子(カーネル役)という3人の女優も登壇。映画について以下のように語った。


押井 ちょうど撮影してから一年になりますが、ようやく映画として完成しました。僕はひとつの現場でひとりの女優さんとしかつきあえないので、今回は全員別々に撮影して、あとから編集と合成で合わせる形にしました。女優さんにとっては会話する相手がその場にいないし、CGが加えられて完成した映像がどのようになるか最後までわからないので、大変だったと思います。
 試写を見た人の感想を聞くと「プロローグの10分と、ラストとで雰囲気が全然違う」ということですが、つくっているうちにそうなってしまいました。また「強烈に眠くなる」と言われたシーンもありますが、僕はそこが好きなので、頑張って見てほしいです(笑)。万一寝てしまっても、でかい音が鳴ってアクションが始まりますから目がさめます(笑)。 陰鬱な映画だった「アヴァロン」に比べると、今回の映画は僕にしては珍しく明るい映画になって、自分でも驚いています。「まだあんた、こんな映画もつくれるじゃん」と、僕の周りの人も喜んでくれました。純粋に楽しんでいだだける作品になったと思います。

黒木 監督がおっしゃったように、最終的にどのような映像になるのかを把握するのにいっぱいいっぱいでしたし、監督とのコミュニケーションもうまくとれているかわからないまま撮影していました。ですが「やっと監督と少し通じ合えてきたかな」と思えてきたときには撮影が終わる感じだったので、もっと監督とお話ししたり、いっしょの時間を過ごしたりしたかったです。撮影現場ではほかの女優さんとは全然お会いできず、菊地さんとは先ほど「初めまして」という挨拶をしたばかりなのに、映画の中ではいっしょに映っていて、不思議な感じでした。
 この映画は、見れば見るほどいろんな魅力に気づいたり、見え方が変わったりする作品ですので、少なくとも2回は見てほしいです。

菊地 私は、押井監督の作品には「スカイ・クロラ~」で声優として出演させていただいたんですが、ちょうど「スカイ・クロラ~」がヴェネチア国際映画祭に出品されたとき、私も監督とヴェネチアへごいっしょさせていただきました。そのとき、たまたまお酒をいただいていて楽しくなってしまった私がサンマルコ広場で踊っていたら、それを監督がご覧になっていたんです(笑)。そうしたら今回監督に「サンマルコで踊っていた感じで」と言われて私の踊りを撮影することになり、自由に楽しく踊らせていただきました(笑)。
 映画は、この世に存在しないような大きな敵と戦う、非常におもしろいファンタジー作品になっていると思います。

佐伯 押井監督の「真・女立喰師列伝」に出演させていただいたときはひとり寂しく、暑いコックピットのセットの中で半分気を失いながらの撮影をしていました。ですので今回仲間が増えて心強かったのですが、もっと黒木さん、菊地さんとごいっしょして仲良くなりたかったです(笑)。
 見た後にすごくスカッとする、気持ちの良い映画ですので、ひとりでも多くの方に見ていただきたいです。



さらにこの記者会見のあと、押井守、佐伯日菜子による対談の取材も実現! 以下にそのもようを紹介する。


――押井監督は「最初に考えていた映画と違うものができた」とおっしゃっていましたが、当初はどのような映画を想定されていたのでしょうか?

押井 もうちょっとタイトでハードな映画になるのかなと思っていたんだけど、準備している間に少し変わって、撮影の現場に入ってまた変わって、編集やったらもっと変わって、音響の仕上げをやったら全然変わっちゃった(笑)。

佐伯 でも、事前に見せていただいた絵コンテと撮影は、だいたいいっしょじゃありませんでした?

押井 カメラワークに関してはそんなに変わってないです。ただ編集で変えていきました。やっぱりおもしろい画を優先的に編集で残していくから、ある程度変わることは想定済みだったけど、思ったよりも変わった。3人の女性の中では、(佐伯の演じた)カーネルがいちばんタフでタイトなキャラだという設定だったんだけど、彼女がカタツムリを見つけたシーンのあたりから変わったのかなという気がする。

佐伯 ああ、あのシーンはコンテになかったですからね。

押井 あれは完全にアドリブです。ロケハンしていたら良い場所を見つけたので「ここで撮ろうかな」と思って撮影しました。カーネルは本編でいちばん銃を撃ちまくっているから、バランスを良くするため彼女のしっとりしたところを増やしたかったんだけど、カタツムリとの絡みで意外な子供っぽさが出せて良かったんです。昔だったら、東京にフィルムを持ち帰ってラッシュを上げるまでどんな映像になるかわからないけど、今は撮影したらその場でモニターを使ってチェックできるからね。だから撮影現場で次々と予定を変えていくということが身軽にできるようになりました。
 あとは(菊地)凛子が大きいんじゃないかな。彼女がああいう天然系のキャラになった途端に映画の方向性が変わった。そういうキャラを生かそうと思うと、タイトな方向性だけだとバランスが悪いですし。

佐伯 菊地さんがあんなに上手に踊られているとは思ってませんでした(笑)。「菊地さんが踊る」という話を聞いたとき、最初はダンス指導みたいな方がいらっしゃるのかなと思ったら、全部菊地さんのアドリブで踊られているという話だったので驚きました。

押井 彼女が踊れることはわかってたからね、自由にやってもらいました。

佐伯 菊地さんと同じ事務所の(「スカイ・クロラ~」でカンナミを演じた)加瀬亮さんも踊りが上手なので、そういう人を集める事務所なのかなと一瞬思いました(笑)。


――「内容がどんどん変わった」ということですが、脚本段階では、映画の結末も異なったものになる予定だったんですか?

押井 どうだったかな? 脚本といったって、A4用紙で数枚くらいのプロットみたいなものしかなくて、確か一晩で書いた(笑)。絵コンテも1日で切っちゃった。

佐伯 絵コンテはすごくおもしろかったですよ。あれ、ヤフオクとかで売れるんじゃないでしょうか?(笑)。

押井 DVDになったら絵コンテが特典でつくかもしれないけど。ただあの絵コンテは、今まで自分が描いたコンテの中でいちばん殴り描きです(笑)。

佐伯 えー、そんなことないですよ、すごい上手(笑)。

押井 確か6時間くらいで描いたのかな。コンテに縛られていると、実写の現場で見つけた良いものを見落としちゃうことが多いので、実はコンテは描きたくなかった。ただコンテがないと、合成をどうするかとか、役者のスケジュールをどうするかとかわからないと助監督が言うので、そのために描いた。だから現場ではあまりコンテは見なかったね。

佐伯 私、絵コンテを見たとき、モンスターがイェーガー(劇中で藤木義勝の演じるキャラクター)をぱっくんと食べてげっぷするシーンがすごく気に入りました(笑)。

押井 あれは実際の映像でも絵コンテのまんまになりましたね(笑)。CGとか絵を実際につくる人間にとってはコンテはあったほうが良いけど、実写の現場的には「監督である自分の頭の中にしか設計図はないんだぜ」というほうが演出しやすい。ただそれだとスタッフは、事前に何を準備したらいいかわからないから困る(笑)。大作になってくるとそんな作り方は無理なんだけど、今回は少人数だからできた。それに今回は撮影現場が大島だったから、事前に向こうに持ち込んだものを使うしかないから「きょうの撮影では、これとこれ使うから持ってきて」という感じだった。僕はそのほうが、その場その場で思いついたことがやれるから好き。
 あと大島の現場に行ってみて、いろんなものが要らないんだと判明した。あんな広いところでスモーク炊いたって意味ないし、レフ板なんて強風で持てないし、太陽の光の力がすごかったから。だから女優さんの芝居を撮るんじゃなくて、風景の一部として撮っていくようにした。カメラを女優さんに寄せれば演技の世界が成立するけどね。
 そういう意味で言えば、女優さんにとっては難物だったのかもしれない。コンテはあるけど、何をどう撮るのかは当日にならないとわからない。セリフで掛け合う相手も撮影現場にはいなかったから、戸惑ったと思うよ。でも結果的には意外に良かったんじゃないかと思ってる。あとからアフレコでコントロールできるから。
 もちろん段取り立てて撮る映画もあるし、お芝居をカットで分ける映画も当然あるけど、今回のような映画の場合はまず画を撮って、編集でつくるのが正しいんだと思う。だから完成までにずいぶん変わっていく余地があるんだよね。


――本作で、監督がいちばんこだわった点はどこでしょうか?

押井 とにかく「女優さんをどうやって魅力的に撮るか」という絶対的な基準があったので、僕にとっては楽でしたよ。どう綺麗に撮るかだけ考えて、あとは合成とCG担当の人間がなんとかしてくれるだろうと(笑)。現場では綺麗なものを撮って、日が暮れる前に旅館に帰って、温泉入って飯食うだけというバラ色の日々だった(笑)。不満があるとすれば、飯がもうちょっと何とかならなかったかな(笑)。

佐伯 えー、なんでー?(笑)

押井 彼女は「おいしい」と言ってくれたんだけど。とにかく僕は「現場で弁当だけはやめてくれ」ということを要求した。あんな寒風の吹きすさぶ環境で冷えた弁当食っていたらどんどんもの悲しくなるから(笑)。だから現場では、多少中身が寂しくても温かいものを優先してもらった。

佐伯 でも宿の食事はおいしくありませんでした?

押井 まあ旅館だからねえ。

佐伯 えー? きびしいなあ(笑)。

押井 旅館だから何食ってもうまいんですよ。ただ旅館に温泉があったことが最大の幸運だね。撮影中は風に吹きまくられて体冷えまるし、砂で体はじゃりじゃりだし。温泉がないとやってられないよ(笑)。


――佐伯さんは、カーネルを演じるにあたって気をつけたことはなんですか?

佐伯 カーネルのコスチュームを着て現場に立つと、世界に浸ってしまうので気をつける必要はないんです。いちばん大変だったのはアフレコです(笑)。英語のセリフが多いけど私は英語が下手ですし。それと撮影時と同じようにマスクをつけて声を録ったんですが、マスクが顔に合わなくて滑舌は悪かったし、心から申し訳ありませんでした(笑)。

押井 マスクのせいで喋りづらかっただろうけど、実際にマスクをしてマイクで会話するとそうなるはずだし、マスクをした息づかいまで全部欲しかったから、結果的には悪くなかったと思うんですけど。それに自国語以外で感情を入れて芝居をするというのは大変だから、英語という形の日本語でいいんだ。

佐伯 でも押井監督と仕事をすると「女優さんってなんでもできないといけないなあ」と必ず思いますね。いきなり現場に馬を連れてこられて「これに乗ってもらうから」と言われたときはびっくりしました(笑)。


――押井監督は今回は「ファンタジー映画をつくりたかった」ということですが、押井さんと佐伯さんお勧めのファンタジー映画はそれぞれなんですか?

佐伯 私は「ティム・バートンのコープスブライド」ですね。

押井 ああなるほど。僕はやっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」になるんだろうねえ。あれ以上のものは今のところないから。メルヘンというのは別物で、ファンタジーって戦いとスケール感が絶対に必要だから、非常に映画的なテーマなんです。もちろん日本にも「竹取物語」とかがあるけど、やっぱり僕らが考えるファンタジーというのは、ゲームの世界とかSFなどでさんざん見てきた、海外のものなんだよね。だからエルフだドワーフだっていうゲームですっかりなじんだ世界を、生身の日本人が日本語でやると、そうとう違和感があるだろう。ほかにも「これをやるとファンタジーがぶち壊しだ」という、絶対踏んではいけない地雷が山ほどある。たとえば「アサルトガールズ」では藤木がベーコンエッグとパンを食っているシーンがあるけど、あそこでおにぎりを食っていたらファンタジーにならない(笑)。

佐伯 藤木さん、ポスターにも全然写ってなくてかわいそうですよね(笑)。

押井 藤木は「間抜けな男」という役所だからさ(笑)。「ロード・オブ・ザ・リング」のキャスティングは良かったですよね。男もみんな色気があった。だけど実は、日本人のイケメンの男の子が出た瞬間にファンタジーでなくなるんです。日本人でも、藤木のようにドワーフみたいな大男が大砲を担いで歩いてるからいいんだ(笑)。
 日本でファンタジーを撮るにはどうしたらいいか。それで僕がやったのが、まず「これはゲームだ」というフレームをつくることだった。仮想空間という理(ことわり)の中でしか、日本人はモンスターと戦う世界を獲得できない。さらに外国に行って外国人を使って撮影したのが「アヴァロン」だった。だけど今回「アサルトガールズ」では、女優さんをメインにすることで「日本で、日本人でファンタジーを撮る」という回答のひとつを発見したと思ってる。




「アサルトガールズ」は2009年12月19日より順次全国ロードショー。押井守が女優を中心として撮ったというファンタジーをぜひ体験してほしい。

「アサルトガールズ」公式サイトhttp://assault-girls.nifty.com/

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